食欲を抑えることでダイエットをサポートする薬のなかには、クリニックから処方される薬以外に市販されているものがあります。ここでは、副作用の危険性から今では販売されていない食欲抑制剤や厚生労働省から認可を受けている薬剤を紹介。服用の際に気を付けるべきポイントや世界各国の厚生労働省の取り組みなどについても解説しています。
リデュースとは通販サイトで購入できる食欲抑制剤です。一般的な価格相場は3,400~4,000円弱。リデュースの主な成分であるシブトラミンが、脳の神経物質であるノルアドレナリンやセロトニンの分泌を促進することにより食欲を抑えます。
日本では未承認の薬剤のため、海外からの個人輸入代行サイトなどを経由しての購入が可能です。1997年にFDA(アメリカ食品医薬品局)から認可も受けています。ただし、リデュースを服用して副作用が出たという報告もあり、使用する場合は自己責任になるので注意が必要です。
食欲抑制剤であるリデュースを服用したことによって、心拍や血圧が上昇したという報告があります。しかし、これは抗結核薬であるイソニアジドや、パーキンソン病治療薬のセレゲリンと併用したことにより、シブトラミンが分解されたことが原因のようです。しかしそれ以外にも、重い障害が出たという例もあります。
空腹感を我慢する薬として厚生労働省から唯一認可を受けているのが、サノレックスという摂食中枢を刺激する内服薬です。
昼食の1時間前に服用することで、昼食時の食欲を抑えてくれます。初めの頃は1日1粒から服用。最長で3ヶ月以内と服用期間が決まっているため、用法用量を守って正しく服用しましょう。
サレノックスを服用する際には、薬を飲むタイミングに気を付けなければいけません。夕方以降に服用すると睡眠障害を誘発する可能性があります。
また、アルコールとの相性が悪いため、同じタイミングでの服用はやめましょう。めまいや眠気といった副作用が悪化するおそれがあります。そのほかにものどの渇きや便秘、吐き気などの副作用の報告もある薬品です。
個人輸入品による食欲抑制剤は通販などで比較的手軽に購入できますが、その分危険も伴います。
アメリカFDAでは肥満抑制薬として許可を受けている成分のシブトラミンも、日本では未承認の薬品です。副作用が報告されている成分でもあるので、使用の際には細心の注意を払う必要があります。
シブトラミンを含むサプリメントを摂取して副作用と思われる症状が起きた例も。甲状腺機能低下症を患ったことのある26歳のイスラエル人女性がダイエットの目的で、シブトラミン・フェノールフタレイン・アロエエモジンが含まれているサプリメントを服用。2週間ほど摂取し続けたところ幻覚や顔面の紅潮、めまい、異常行動などが生じたそうです。幸い、この女性は治療により快復しました。
なかなか思うように体重が減らず苦しい思いを強いられていても、リスクを考えずにダイエットに臨むのはおすすめできません。「薬が不安・副作用が怖い…でも簡単に痩せる方法がいい」という方には、サプリメントがおすすめです。サプリメントの中でも安全性を重視して、日本で製造・販売されているものを選ぶと良いでしょう。
食欲抑制剤やダイエット薬と呼ばれる薬の中には、危険性が叫ばれ販売中止や製品の回収に踏み切ったものもあります。ここでは、それらの薬品について紹介します。
以前に流通していたのですが、現在では販売中止になったダイエット薬の1つがリダクティル(メリディア)です。ヨーロッパとアメリカで製品名が違うのですが、ここではリダクティルとご紹介します。
リダクティルは、心臓や血管系にリスクのある人が服用した場合に危険性が出る薬として、2010年頃を最後に販売中止になりました[注1]。米国FDA、カナダ保険省によるメリディアに関する臨床試験データで、心臓発作、卒中のリスクが高まることが判明し、企業が自主回収することに[注2]。
リダクティルの主成分であったシブトラミンが含有されている食欲抑制剤はほかにも種類があり、現在でも出回っています。使用する場合でも、自分自身の体調を医師に相談して臨みましょう。
シブトラミンを主成分とした食欲抑制剤の1つで、オベスタットという薬品がありました。インターネット上で2008年頃まで人気があり、海外の薬を扱っているサイトの売れ筋商品として常にランクインしていたほどです。
オベスタットには食欲抑制の強い効果が出る反面、頭痛などの副作用も多く報告されていました。また、目が覚める効果もあり、夜に飲むと眠れなくなる作用もあったそうです。6ヵ月の臨床試験では6~10キロの体重減少が認められましたが、セロトニンをはじめとする抗うつ薬との併用ができないという注意点もあります。
日本国内で開発されたKES524という肥満症治療薬があります。エーザイ株式会社が製造販売承認を申請していた薬品[注3]で、当時は世界83ヵ国で承認を受けていました。
主な副作用としては便秘や口内の乾燥、心拍数の増加などが見られましたが、当初は軽度か中等度ということであまり問題視されていなかったようです。しかしその後、エーザイ株式会社は2010年には販売申請の取り下げと開発中止を発表[注4]。アメリカやヨーロッパで薬品の販売を行なっているアボット社の販売中止を受け、日本のエーザイ株式会社が後を追うように販売を中止しています。
国内で販売されている薬の中で、注意をしなければいけないものもあります。よく耳にするジェネリック医薬品というものは、ただ単に後発医薬品として扱われるだけで安全性が保証されているわけではありません。
食欲抑制剤に含まれるシブトラミンのジェネリック医薬品としてはObestat(オベスタット)、Leptos(レプトス)、Sibutrex(シブトレックス)、曲美などが知られています。「後発医薬品は先発の医薬品の安全性が保証されているから製造されているのではない」という点に注意しましょう。
アメリカには保健・福祉省に属するFDAという機関があります。食品や薬品を中心に、化粧品や玩具、タバコなど消費者が接する機会が多い製品の認可や違反の取り締まりを行なう機関です。2011年に成立した食品安全強化法によって、食品のリコール発令や輸入食品の監督など、前身となる農務省化学局よりも権限が強化されました。
TGAと呼ばれるオーストラリアの保健省薬品・医薬品行政局では、治療に効果のある医薬品やサプリメントの安全性、品質管理を行なっています。TAGは製品の認可後でも常に抜き打ちで製品の検査を行なうなど、製品の品質と安全を強く追及することで知られてもいる機関です。
中国の特別行政区である香港衛生署は、健康食品に医薬成分が配合されている製品による健康被害について、調査や分析を行ないます。
シンガポールの保健省傘下である健康科学庁(Health Science Authority: HSA)は、健康サプリメントや漢方薬、医薬品、化粧品、医療機器などを監督下に置き、安全品質基準を含むガイドラインを策定している機関です。ただし、サプリメントの輸入や販売、製造について免許要件や製品登録を義務付けているわけではなく、輸入業者等取扱事業者の自主管理に委ねている部分があります。
各国で注意喚起されている商品を5例紹介します。日本ではダイエット目的の処方薬としてタイ製の「ホスピタルダイエット」や「MDクリニックダイエット」と称される製品の注意喚起が行なわれました。
引用元:「健康食品」の安全性・有効性情報HP
(http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail3605.html)
香港衛生署では医薬品成分であるシブトラミンとフェノールフタレインを含む「明星?身 (SIN DEN SLIMMING)」と「纖塑減肥??」2製品の使用をしないように、注意喚起を促しています。
引用元:「健康食品」の安全性・有効性情報HP
(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3542.html)
オーストラリアTGAからは「Herbal Max Real Slim Capsules」と「Majestic African Mango capsules」の2製品に対して、2017年に注意喚起が行なわれました。
引用元:「健康食品」の安全性・有効性情報HP
(http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail3549.html)
通販サイトでもノルアドレナリンやセロトニンなどの神経促進物質の分泌を促進させて食欲を抑える「リデュース」という食欲抑制剤が出回っています。FDAからも認可を受けていますが安全かと言われると、必ずしもそうではありません。抗結核薬の「イソニアジド」やパーキンソン病治療薬「セレゲリン」と併用したことで、心拍や血圧上昇を起こした人がいたようです。その他に頭痛や睡眠障害などの副作用も報告されています。
ちなみに、海外からの流入された食欲抑制剤やダイエット約の中でいくつか危険性が高いと判断され、販売中止となったものもあります。「リダクティル」というダイエット薬は、米国FDAやカナダ保険省が心臓発作・脳卒中のリスクがあるとし、「オベスタット」と呼ばれる食欲抑制剤では、頭痛や覚醒効果があり不眠作用があることが判明。一方、日本で開発され世界83か国でも承認を受けていた「KES524」も便秘や口内の乾燥、心拍数増加などの副作用があると発表されており、販売と開発の中止になりました。
他の薬と併用している場合は、必ず医師との相談をするようにしてください。また、どのような副作用があるのか、製造国はどこなのかを事前に把握したうえで服用しましょう。
最近よく耳にするジェネリック医薬品は、後発医薬品として知られていますが、中には安心・安全であるという誤った認識もあるようです。「ジェネリック=安心」でないことは知っておいてください。
また、市販薬を購入する前に見てほしいのが、どこの機関で承認を受けた薬であるかという点です。アメリカであれば「FDA」、シンガポールであれば「HSA」があります。各国省庁による承認を受けていない市販薬はなるべく手を出さない方が安全でしょう。